マンション相場の高騰を受けて、初めてマンションを検討する多くの人が、将来の資産価値・リセールを気にするようになりました。
マンションの資産価値を考えるにあたり一番重要な視点は、「人気の街、エリア」と「立地」、つまり有力な路線、駅の駅近です。不動産は立地ですから、これに尽きます。加えて、再開発、タワーマンションなど特定の人気物件なら鉄板。
これだけマンション相場が上がってしまうと、私たち一般庶民が、そんな人気物件を購入する事が難しくなりました。他の諸事情含め、郊外や駅から遠いマンションを選ぶ人も多いと思います。
だからと言って、リセールや資産価値を諦めてはいけません。誰もが将来の不測の事態の折、もしくはライフスタイルの変化により住み替えることを想定して、少しでも「高く」、「売却しやすい」住まいを選ぶ必要があります。
この記事のイシューを、「駅から遠いマンションでも資産価値、リセールを確保する視点」としました。
この記事の目次
前提:駅遠マンションのリセール
「駅遠」の定義を11分以上としました。「駅近」は5分もしくは7分以内とされ、駅徒歩8分、特に11分以上の物件は検索率が大幅に下がるとされています。
大事な前提が一つ。
資産価値を計る上で、リセールバリュー(RV:%)は暴落率ですから、将来への影響度を見る上で大事なことは、購入価格です。
RV(%)=(売却時の価格 / 購入時の価格 ✕ 100)
条件が近い部屋の購入価格が異なれば、安い部屋のリセールが良くなるのは当然です。
そこを前提として押えておきましょう。
駅から遠いマンションが資産価値を維持するために
「資産価値を維持する」とは、需要が高くすぐに買いが入り、その結果、相場が高止まりすることです。つまり、「多くの人からこのマンションに住みたい!と人気が出ること」に他なりません。
駅遠の人気マンション例
駅遠であるにもかかわらず、リセールバリューを維持しているマンション、東京都江東区の「東京スイート・レジデンス」をケースに、駅遠マンションが高い資産価値を維持する視点をまとめてみました。
「東京スイート・レジデンス」は、東京都江東区、都営新宿線「西大島」駅徒歩12分の立地に建つ、総戸数526戸の大規模マンションです。
重厚感、高級感あふれる大規模ランドスケープデザインに、充実した共用施設、大型ショッピングセンターが隣接していること、マンション周辺の恵まれた住環境にあることから、エリア内では人気が高く、高値で売買されています。
築11年経つのですが、新築分譲時からおよそ+20%、近隣相場と比較しても+30%ほどで売買されています(※2019年4月時点の情報)。
現在、3戸が平均坪単価249万円(1坪=3.3㎡)で売出されており、実際今年の3月には、75㎡の部屋が5,480万円(@240万円)で成約されています。新築分譲時に、近い条件の部屋が4,680万円で分譲されていましたので、11年経っておよそ20%値上がりしたことになります。マンション高騰の煽りを受けて相場を押し上げていることは確かですが、駅から遠いマンションの中では、飛び抜けたリセールバリューを誇っています。
近隣で売り出されている近い条件(駅徒歩10分以上、築10年以上)の平均は190万円前後でした。実勢坪単価を180万円として75㎡換算をすると、4,086万円になります。
東京スイート・レジデンス
坪単価240万円、75㎡あたり5,480万円
近隣のマンション相場
坪単価180万円、75㎡あたり4,086万円
物件の一例から入りましたが、以下に「駅遠」でも人気を高まり、ひいては資産価値の維持につながる条件をまとめてみました。
再開発・街づくりの一役を担っている
再開発が進めば、駅から遠くても周辺は綺麗な街並みになり、注目を集めるようになります。また、新しい生活利便施設が開業することで、将来の周辺相場が上がっていくことは当然と言えるでしょう。
「シティタワー金町」(葛飾区新宿)は、東京理科大学、葛飾区と一体で再開発エリアの住宅機能を担ったタワーマンション。
駅徒歩12分の立地ですが、再開発によって大型スーパーが開業し、一般開放されている東京理科大学の図書館や広大な緑地が整備されるなど、子育て世代から高齢者まで住みやすい環境になりました。更に金町駅周辺は他にも再開発が控えており、近隣エリアは住宅地としての人気が高まっています。
都心に近いエリア・人気のエリア
駅から遠くても、直線距離で都心に近い場所だったり、都心部やビッグターミナルの駅、人気の街であれば、需要は旺盛で駅徒歩のハンデを補ってくれます。例えば、吉祥寺(東京都武蔵野市)は住みたい街ランキング常連の人気エリアですが、近年、吉祥寺駅から徒歩15分以上のマンションでも、驚くほど相場が上がっています。駅徒歩23分の「プラウドシティ吉祥寺」の人気はすごかったですね!(2020年に678戸完売)
大型ショッピングセンターや大規模公園に隣接
「駅遠」を選ぶ人にとっては、便利に楽しく生活を送れる大型ショッピングセンターが隣接、近接している環境は、多くの人が望むもので、駅遠のデメリットを埋める重要な要素になります。人がたくさん訪れる人気施設に隣接していれば、「このマンションに住みたい」と指名買いが起きるような目立った存在にもなるでしょう。
「リビオシティ・ルネ葛西」(江戸川区東葛西)は、大型商業施設「アリオ葛西」に隣接する439戸の大規模マンション。
「アリオ葛西」隣接による高い生活利便性に加え、このマンションのコンセプトに基づいた特徴ある共用施設が充実していることで人気があり、駅徒歩18分のハンデにもかかわらず、竣工半年前に439戸が完売しました。更に大通り沿いに面しているので、この大規模ランドスケープが、周辺でも目立つ存在感を発しています。
大規模の存在感と多くの人が惹かれる外観
マンションは、「格好いい!」「素敵!」という、一見理屈ではないエモーショナルな部分がとても大事だと思っています。人でも車でも第一印象は大事です。相対的に多く検索されたり、第一の検討材料に入ってくる「指名買い」が起きるのは当然です。感情的な部分、好みは人それぞれなのですが、例えば、大規模マンションの重厚感、圧倒的な存在感であったり、吹き抜けの豪華エントランスや車寄せ、植栽計画など高級感を醸し出すランドスケープデザインは、多くの人に印象を残します。幅広く認知されるような人が集まる、開けたロケーションに建っていることも大切な要素の一つです。
駅徒歩13分の「ザ・パークハウス青砥」(葛飾区青戸)は、東京都の「総合設計制度」が採用された、528戸の大規模マンション。
エリアでは珍しい20階建ての大規模に、4,500㎡もの広大な敷地「ファミリアムフォレスト」がランドスケープの大きな特徴。都心部ほどマンション熱が高くない青砥エリアですが、界隈では頭ひとつ抜けた存在感を放っています。
充実した共用施設
充実した共用施設、サービスは、大型商業施設隣接と同じ理屈です。駅から遠いマンション最大のデメリットである不便な環境を解消してくれる要素となります。
管理が行き届いているか
住民が年を重ねても生活しやすく、住人がマンションから離れて空き室が多くならないために、コミュニティ醸成などソフト面も含めた様々な工夫をした管理や、清掃や施設の運営がしっかりされていることがマンションの資産価値を左右します。新築時に理解できることではありませんが、「マンションコミュニティ」などの口コミサイトでは入居済みのマンション管理の実態を垣間見ることができますし、中古マンションであれば内見する機会があります。仲介業者に「修繕積立金計画」などの確認も取りましょう。
移動手段の確保
駅から離れていても、移動するのに便利な環境にあったり、マンションの共用サービスが充実していれば、売却するときもハードルが下がるでしょう。
「駅から遠い」は、路線と路線の中間地点、すなわち複数路線や複数駅利用ができる立地を選べるかもしれません。【A駅徒歩16分、B駅徒歩12分の2駅利用可能】など、駅から遠くても2駅、2路線などを利用できれば柔軟に便利に移動手段を確保できます。
直線距離で都心に近い場所や、都心へのアクセスがよい路線、駅、ビッグターミナルの側など、レジャーや買い物、通勤に、公共の交通手段、自転車での移動で便利に使いこなせる場所。マンション前にバス停があることも大きなポイントです。
マンションの共用施設、サービス面では、最寄り駅を往復するシャトルバスが用意されていること。車や自転車利用が増える環境であることから、出し入れに便利な自走式駐車場やサイクルポート完備など、不便な生活をしっかりサポートしてくれるマンションは、駅から遠くても積極的に検討される一因となります。
「アクラス」(江戸川区平井)は、駅徒歩15分ながら、エントランスと平井駅を往復するマンション専用シャトルバスが用意されています。
駐車場は平置き100%!で、1階住戸前には専用の駐車場が設置されています。公共のバス停もマンション前にあるので駅までの移動が便利です。
最寄りの平井駅から東京駅までは十数分という通勤に便利な都心近接にもかかわらず、旧中川沿いの自然環境の良さが目を惹きます。更には、マンション敷地から外に出ずに入店できるコンビニエンスストアが併設されているなど、駅遠マンションならではの居住者視点で人気のマンションです。
風光明媚、明るく静かな抜群の住環境
駅遠のメリットとしては手に入れたいですね。上記「アクラス」のように周辺がリバーサイド、他にもパークサイド、緑地に隣接などで、日当たり、眺望が最高!ビッグスケールの住環境の良さは、駅遠くだからこそ得られる価値であり検討される要素になります。
売却しやすい条件を選ぶ
駅から遠くても検討できる動機をくすぐること。すなわち、日当たり、眺望に加え、専有面積や間取りなど居住性の良さが、駅近の住まいに比べて充実していることは最低限だと考えています(関連記事)。
「安かろう悪かろうではなく、安さは正義」の視点
ただし、リセールは購入金額からの暴落率なので、条件が良くとも、周辺の中古相場を確認しながら少しでも安く購入する視点が必要です。
最後に。冒頭の話に戻りますが、リセールを保つためには、入り目の購入価格が非常に大事です。
例えば、以下のような視点も。
新築マンションは、条件が悪い住戸の価格を必要以上に下げて販売します。
最多価格帯は5,000万円前後、
3,980万円~売出し
最多価格帯は4,000万円前後、
2,980万円~売出し
最多価格帯を大きく下回る「~からの売出し」は、いわゆる「パンダ部屋」、価格を条件以上に落とし顧客へ訴求する部屋のことです。物件内で一番条件が悪い部屋なのは間違いないですが、ここまでの価格設定になれば、「安かろう悪かろう」を超えて、リセールで見たときに「安さは正義」になります。
例えば、70㎡3階が3,780万円、同じく2階が2,980万円としたら、売却相場からRVにすれば数%の差のはずが、上記の売出し時では20%以上も差を付けて販売しているため、売却時の差は少なくなる、つまり2,980万円の部屋の方がRVは良くなるはずです。
10年後に以下の価格で売却できたとしましょう。
3階、3,780万円の部屋→3,000万円で売却
(RV=約80%)
2階、2,980万円の部屋→2,800万円で売却
(RV=約96%)
販売都合上、パンダ部屋だけでなく、住環境の差以上に価格に乖離が出る場合もあります。
例えば、近隣の成約実態が、西向きでも南向きでもさほど変わらない中において、新築売出しが、
南向き、70㎡、5,500万円
西向き、70㎡、5,000万円
としたときに、西向きであれば購入価格を抑えられて、リセールも良い見方ができます(西向きでも眺望が良く南向きと住環境で引けを取らない場合など、条件にもよります)。
「少しでも条件が良い住戸を少しでも安く購入する」、「条件以上に安くなっている部屋をチェックする」視点を持ちましょう。
以上、高い資産価値を維持するために、駅遠でも人気が出るマンションの要素を幾つか見てきました。
まとめ・最後に
駅から遠い、一見敬遠されそうなマンションでも、デメリットを補う多くの好条件が絡まり、駅近物件に負けずに人気が出ること、合わせて、実際に住んでいる人の満足度も高いことから、大規模であっても売出数が常に一定数に絞られることで需要が供給を上回り、中古市場でも新築時の価格をしっかり維持できる、そんな良質な駅遠マンションは存在します。
何点か上げてきましたが、特に、人気のエリア、再開発物件、大型ショッピングセンター隣接、大規模マンション(デザイン)、南向きが永久的に前建てが無い環境で日当たり、眺望が最高の物件は見逃せませんね。
駅から距離があるマンションを検討する前に、売却がしやすく、リセールを保てる視点も持ち合わせてほしいと思います。