f:id:murakoshi5:20190406235518j:plain「わぁ、広い!」「わぁ、素敵!」。マンションのモデルルームや、人様のマンションの部屋を見て感嘆する声は、リビング空間を見た瞬間に発することが多いのではないでしょうか。住戸内の一つの空間で一番の専有面積を占め、過ごす時間が一番長く、様々なライフスタイルが描かれるリビングは、マンションの顔になるからです。

ですから、分譲マンションを購入するなら、広いリビング・ダイニング(以下LD)空間を手に入れたいと思っている人が多いと思います。4回マンションを購入した僕も、LD空間の広さは、マンションにおける生活満足度の大きな一つだと実感しています。

「広いリビング」とは何畳を指すのでしょうか

予算が1億円以上と余裕があって、都心だろうがどこだろうが100㎡の住戸を購入できる人に、今から書く、この記事は必要ありません。

私たち一般庶民は、このマンション高騰時代において、予算が限られている中、生活を満喫できる最低限の広さのLDを確保する必要があります。

以上を踏まえた上で、私は『広いLD空間』を以下と定義します。

リビング、ダイニングで、最低限の余裕を持って生活できる有効空間

それは、
生活に使用できないデッドスペースや柱を含まず、更に家具を効率的に配置しやすい整形な、10畳以上の空間
です。

マンションに入居したら、どんな生活を送りますか?

ダイニングテーブルで朝食や夕飯を家族で食べたり、ソファに座ってテレビを見たり、たまにはソファの前のローテーブルで食卓を囲んだり、作業をしたり。やっぱりゆったり生活したいですよね。

その最低限の生活空間の定義が上記です。

なぜでしょうか。

マンションのモデルルームでもよく見る不文律。

ダイニングテーブルに椅子4脚。ソファにローテーブルにテレビボード。この「LD家具セット」が、なんとか窮屈せずにおける広さだからです。

更にそれぞれ深掘りしてみると

ダイニングテーブルは、長さ1300mm。1200だと4脚ギリギリで、家族4人や客人が来た時に少し窮屈。

ソファは、できれば1800。それ以下だと、2~3人掛けと設定されていても、実際はゆったり2人座れず、更に、LDの中でも顔であるソファをこだわって選びたい人が多い中、1800センチ以下だと、お気に入りのブランドからチョイスできる選択肢が大きく減ります。ブランド家具は最低でも1800以上であり、それでも小さいほどです。特に、5,000万円、6,000万円もするマンションを選んだ人が、ブランド家具を置けないなんてあり得るでしょうか。マンションが6,000万円で、ソファは大きさでおけないから、ニトリで我慢することはしたくありません(ニトリが悪いと言っているわけではありません)。

ソファの前にローテーブルも置きたいですね。余裕が無い空間だと、ローテーブルを置かずに、小さなサイドテーブルでごまかしがちですが、ローテーブルは、ダイニングでなくリビングでたまに家族で食卓を囲んだり、子供と遊んだり宿題したりと、結構用途があるのです。

最後にテレビボードですが、LDに置くテレビサイズは近年相当大きくなり、新居に購入するテレビは50インチ以上が多いと聞きます。50インチ以上でも10万円台で購入できるご時世です。せっかくの新居、以前のように40インチ前後で妥協すると後で後悔します。テレビが50インチ以上だとするとテレビの幅は1200センチ前後かそれ以上。そうした時に、テレビ台は、両幅の余裕が無いと格好悪いので、できたら2周り長い1800ほしいところですが、最低でも1500。

ということで、70㎡3LDKを選べば、普通ならLD10畳以上はあるでしょうと思われるかもしれませんが、事はそう簡単にいきません。確かに、通常の70㎡クラスのLDだと、間取り図上の表記は、10畳以上がほとんどです。それでも、特に大手の新築分譲マンションでは主流ですが、モデルルームで、実際の部屋を見ずに間取り表だけ見て購入すると、入居して初めて本当に10畳以上?と、家具を入れて初めて空間が「手狭、窮屈」なことに気がついて大きな後悔をする事態が多く発生します。

それは、初めてマンションを購入する人には到底理解できない、間取り表上の部屋の広さを表す畳数に問題があるからです。

快適なリビング空間を確保する間取りの見方

以前の記事のおさらいになりますが、部屋の畳数という数字上だけで判断すると痛い目に遭います。

以下のような物件AのLD空間。f:id:murakoshi5:20190407000051j:plain

住戸のうちLDだけ切り取った図です。LD10.0畳とあります。10畳あれば及第点と先ほど言いました。

そこで、もう一つ違う物件Bの10畳の部屋と比べてみたいと思います。右図を見てください。こちらもほぼ同じ10畳です。f:id:murakoshi5:20190407000206j:plain

この2つは、以前同時期に分譲されていた実際の住戸です。

それでは、実際の生活有効面積を把握した上で、家具を配置してみるとどうでしょうか。f:id:murakoshi5:20190407000244j:plain
物件AのLDは、廊下のような生活に使用できないデッドスペースとLDに浸食している柱型を含んでの10畳なので、実際の生活有効面積は約7畳になり、更にいびつな部屋の形であるため、家具を上手に配置できません。一方、物件BのLD空間は、室内空間に何の浸食もデッドスペースも無く、全て生活に使用できる整形な形の効率的な空間の10畳であるため、LDセットの家具を十分に配置できます(関連記事)。

同じ10畳という表記でも、生活への影響は全く異なると言うわけです。

以下は、現在分譲されている、マンションの間取り図です。f:id:murakoshi5:20190407000428j:plainマンション名は出しません(詳しい方なら特徴を見てわかると思いますが)。

リビング・ダイニング・キッチン(LDK)で14.8畳です。

f:id:murakoshi5:20190407001029j:plainどう思いますか?

初めてマンションという物を検討する人は、何がどう思うのかさえ、わからないはずです。

少しだけわかる方なら、なんとなく、キッチン3畳、リビングダイニングで12畳近くかなと、まあ悪くは無いという印象でしょうか。f:id:murakoshi5:20190407001108j:plainそれでは、実際にLDに使用できる空間の有効面積はどれくらいなのでしょう。間取りソフトを使用して縮図を書きましたので、およそ精緻に畳数を出しました。

f:id:murakoshi5:20190407001142j:plainキッチンが3畳ほどを占めていますが、キッチン横、LDドア入った1.5畳の廊下のようなスペースはテーブルも何も置けないデッドスペース。そして、室内左端の棚の部分が1畳ほどもあり、足をつけて生活できないデッドスペース。念のためデベロッパーに確認をとりましたが、LDの乗数に含まれます。0.2畳ほどのPS(壁の中のパイプ配管スペース)も乗数に含まれてしまっているため、それらを差し引いて、実際に人が生活できるLD空間スペースは8.5畳ほどと、思ったより狭いものでした。

繰り返しますが、生活有効スペースがなぜ10畳必要かと言えば、一般的なリビング・ダイニングで生活を満喫できる家具のセットを配置したときに、余裕を持って生活できる最低限のスペースが10畳だからです。

家具を置いてみました。先ほど触れたように、ダイニング1350、ソファ1900、コーヒーテーブル900✕600、テレビボード1500を配置。f:id:murakoshi5:20190407001214j:plain見づらいかもしれません。残念ながら、色々試してみましたが、アウトです。全然置けているように見えるかもしれませんが、奥行き600ほどが人のスペースとして必要なのです。ということは、見ていただければわかるように、テレビボード、ローテーブル、ソファの間に座ろうとしたときに、ローテーブル挟んだ両方に600のスペースが必要であり、そのスペースがとれません。また、50インチ型のテレビを入れようとしたときに、最低1500サイズのテレビボードを置くと、窓枠までボードが浸食してしまいます。

人の大きさ(●)と、他の家具、空間をもう一度想像してもらいたいのですが、かなり手狭で窮屈です。実質スペースが8.5畳だと、こんなものです。もう少し余裕があれば最低限、広さに対する満足度を得られます。10畳がほしい所以になります。f:id:murakoshi5:20190407003126p:plain実際にこの間取りの部屋は、南向きで上層階だと7,000万円近くする部屋です。間取り表だけ見て優雅に選んでみたところで、7,000万円もの大金をはたいて入居してみて、50インチのテレビも入れられない、ソファも小さくしなきゃ、コーヒーテーブルは捨てよう、で良いでしょうか。想像していたブランド家具を捨て、量販店で小ぶりな家具を買わなければならないかもしれません。

通常、僕みたいな庶民が買える3~4,000万円くらいの70㎡規模のマンションだって同じです。一生物の家ですからゆったり暮らしたいのに、IKEAで数万円で買える2000mm規模のソファを入れてみてはじめて、「うわ、狭っ!」と後悔するのです。

更にこの間取り、隣の部屋との間仕切りが不十分なため、家族が少ないときに隣の洋室と合わせた大空間にすることもできません。

もちろん、人によって価値観は違いますので、LDが広くなくても、駅近の環境、充実した共用施設でマンションを選ぶと事前に優先順位を理解していれば問題ないのですが、こういった事態を知らないまま、図面だけでマンションを購入し、実際に家具を検討、購入して初めて、生活の窮屈さに後悔するということだけは避けてほしいのです。

実際に僕がそうでした。

最後にまとめてみますが、一般的に70㎡3LDKの間取りを選べば、大体が間取り図の表記上の数字は、LD10畳以上、およそ12畳前後を確保しています。ただし、実際の生活有効面積が10畳以上あるかをきちんと把握してください。数字上の先入観に惑わされないでください。生活有効面積が10畳であればLD表記が10畳でも良いのです。

LDの家具セット一式が、最低限の余裕を持って上手に家具を置けるLD空間は、生活有効面積10畳であること。
1, 何も置けないデッドスペースがないこと
2, 室内に浸食している柱型、PSを含まないこと
3, 部屋の形が整形にととのっていること
4, 隣の部屋の間仕切りで広々一体空間にできること

以上です。

最後に

本当は、もっと余裕のある大空間のLDに住んでみたいですけどね。生活有効面積11畳、12畳以上あれば理想ですが、そうすると一般的な間取りのマンションでは表記が13、14畳以上と大型住戸の間取りになり予算的にも制約されてしまうかもしれません。ですから上記の条件を達成できる生活有効面積10畳が最低限です。

マンションのモデルルームでは見せてくれる部屋に制限があります。最低限、一般的によく見るLDの生活スタイルを実現してマンションライフを送れるよう、特に間取り図だけ見てマンションを青田買いするときに、注意したい大事なポイントでした(関連記事)。

Twitterでフォローしよう