煌びやかな外観やブランド、凝り固まった沿線重視のマンション選びに捉われず、毎日室内で便利に伸び伸びと暮らすために、居住性を大事にしたマンション選びも大切です。
この記事の目次
マンションの間取りは2つのタイプに集約される
70㎡前後、3LDKファミリーユースのマンションにおいて、居住性を見る上で大事な間取り。広くて楽しそうで使い勝手の良い間取りを選びたいところですが、実際そうはいきません。マンションは、相当数の供給住戸があるにもかかわらず、間取りはというと、およそ6メートルスパン(開口部に対する住戸の幅)で、両隣も住戸に隣接した2つのタイプに集約されてしまいます。「田の字型(縦長リビング)」タイプと「田の字型(横長リビング」タイプです。
それは、現代マンション事業において、一般的な2LDKや3LDKの住戸スパンが6メートル以下だと、人が生活をする上での居室や設備の配置が難しくなることから、デベロッパーが効率よく住戸を配置する上で、6メートルが最低限1世帯当たりの住戸の幅になるからです。
デベロッパーはこぞって6メートルスパンの部屋を提供してきます。そして6メートルにすると既述の2タイプくらいしか部屋を配置するバリエーションがなくなるので、結果2タイプに集約されてしまうことになるのです。ですから、小規模の物件より、200、300、500世帯、、、といった大手の大型物件は、最上階や角部屋を除いて、ほぼこのタイプの間取りに集約されるといっても過言ではありません。
2つの代表的な間取りの特徴
各居室や水回りの位置は物件によって違いますが、開口部に対して縦長の住戸になり、両側が壁に覆われています。
6メートルスパンが最低限部屋を配置する効率的な幅といいましたが、各居室やキッチンなど水回りなどの機能についても最低限であり、住み心地が良いかと言えば、決して良いとまでは言い切れません。
住み心地に関するデメリット
田の字型(横長リビング)の間取りでは、以下のように住み心地に関するデメリットを見て取れます。
① 住戸壁面積に対し窓が少なく小さめ
② 両側が壁に囲まれて開放感がない
③ 長方形の居室が増え、使い勝手が制限される
④ 廊下のような生活に使用できないデッドスペースが増えてしまう
⑤ クローゼットや下駄箱の収まりの悪さが部屋の使い勝手を悪くしてしまう
⑥ 柱の室内への浸食が部屋の使い勝手を悪くする
⑦ 玄関からLD住戸奥まで見渡せることで住戸の奥行き感がない
⑧ 玄関側の部屋が共用廊下部分である場合が多く暗くなりがち
デベロッパーの効率的配置=消費者にとってのメリットもあります。
田の字型間取りのメリット
効率的な土地活用と部屋の配置、窓が少ないなど1部屋1部屋の低コストの作り、そして何百という部屋に割り当てられる浴室ユニット、水回りなど業者への購買条件とうによって、購入者にとっても最低限のコスト負担でマイホームを購入できるということが、最大のメリットになると思います。
それと、人が住む上での最大公約数、不文律で落ち着いた間取りなので、奇をてらった間取りより「無難に」使いやすいのは確かです(関連記事)。
しかしながら、販売時点における需要と供給のバランスで、立地、ブランド、南向きなどの要素で人気が出る物件を効率的に配置し売り出せば、間取りは工夫しなくても大概が販売できてしまうので、工夫が無い「田の字型」間取りがデフォルトであるのは、消費者視点では解せません。
居住性が高い間取りの特徴とは
マンションにおける『居住性が高い間取り』とは、上記2つの代表的な間取りと比べ、相対的に住みやすい間取りと定義したいと思います。住み心地向上につながる間取りを実現するために大事なことは以下の2点です。
住戸の幅が6m以上のワイドスパンであること
室内に柱が侵食しないアウトポール設計であること
住戸幅については、7mや8mといったワイドスパンとまでいかなくても、6.4mは欲しいです。6.4m以上のスパンが、6.0〜6.3mという誤差ではなく、作り手の意図として、住戸の居住性、利便性向上を図ることが感じられるからです。
同じ専有面積として、住戸の幅が広がれば広がるほど、当然住戸の形は正方形に近くなります。部屋が正方形に近くなることで、長い廊下や、室内に上手く収まらないクローゼットなどのデッドスペースが少なくなることが住戸の居住性、使い勝手向上につながります。また、ワイドスパンになるに従い、代表的な間取りに縛られない面白い間取りを作ることができるのも魅力です。
以下の間取りは、良い間取りのお手本として、アウトポール、ワイドスパン(推定6.5m前後)の住戸の間取りです。
ワイドスパンになれば・・
① 窓の幅も当然広がる
② 50センチ幅が違うだけで、住戸の開放感が出る
③ 正方形に近い部屋になり、家具の配置がしやすくなる
④ クローゼットや下駄箱が収まりやすくなり、部屋の使い勝手が向上する
⑤ キッチンカウンターの幅が広くなり料理がしやすくなるなど、設備とうの利便性が向上する
⑥ 廊下の幅が増え、使い勝手がよくなる
⑦ 廊下のような生活に使用できないデッドスペースが減る
アウトポールになれば、
⑧ 柱の室内への浸食がないため、部屋の使い勝手が格段に良くなる
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希少な間取り物件をどうやって見つけるか
では、そんな居住性が高い間取りを作っている物件をどうやって見つけたらよいのでしょうか。特にマンションを初めて購入する人は、○○線沿線や立地などから入る人が多いと思いますが、柔軟に幅広く購入条件を見直せる人、長い目でマイホームにおける良いハコ(居住性)を追求したい人には、間取り重視の物件選びをおススメします。
デベロッパーで選ぶ
一番重要な事です。「居住性を高めること」を経営理念、コンセプトとして物件供給している不動産会社、マンションデベロッパーであれば、住みやすい住戸選びが容易になります。
間取りを大事にしているおススメの会社は以下の4社です。全国的、または首都圏においてある程度広く展開している会社を前提としています。
「ライオンズマンション」などの大京
「イニシア」などのコスモスイニシア
「ディアナコート」などのモリモト
「クリオ」などの明和地所
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例えば、間取りの匠として、モリモトの社員の言葉が紹介されています。
間取りは社内の会議で社長から現場の営業担当も参加して決める。会議後も「あの間取りだけど、やっぱりこうしたほうが良いのでは」と方々から意見が出る。事業としては非効率かもしれないが、作り手にとっては、「ビジネスよりも、まず家づくり」なのである。
Suumo新築マンション 首都圏版 2017.8.22より引用
大型投資で一等地を取得して効率良くたくさんの住戸を配置し、色よい広告で売り切って利益を稼ぐ事業とは一線を画す、消費者視点の素晴らしい経営姿勢だと思います。他にも華やかな大手に対抗して、間取りを重視した物件を提供する地域に根差した中小デベロッパーも存在しますので、細かくデベロッパーを吟味してみると、希望のエリアで素晴らしい間取りの部屋を見つけることができるかもしれません。
小規模物件を物色する
一般的に、供給戸数200戸や500戸といった大型物件になるほど、先ほど触れたように、デベロッパーは効率的事業として6メートルスパンの住戸を並べて供給してくるので、良い間取りに出会うことはできません。20戸~50戸といった小型物件であれば、6mスパン効率的原理を適用する必要性も薄くなり、であれば、大型物件のような充実した共用施設を売りにできない分、居住性を大事にした間取りで顧客の目を引く販売方法につながることも多いようなので、小型物件から素敵な間取りが見つかりやすいと思います。
ハンデある立地や西向き住戸を物色する
通常マンションは、極端に話すと、南向きの閑静な一等地に建てれば、立地と大手の華やかな広告で大抵は売れます。しかしながら、物件の環境にハンデがあると、他で売るための努力を要します。住戸の前が大通りで喧騒の中であったり、高い建物に面していて日当たりが悪かったり、住戸の向きで言えば、特に首都圏では人気がない西向きなどがハンデになります。そのような物件は、モデルルームに来てくれた人へ住み心地をアピールをしたりと、居住空間の魅力にマンションの価値としてのウェイトを置いて提供するわけです。このような場合、大手の物件でも居住性が高い間取りの住戸を提供している場合があります(以下関連記事)。
最後に
以上、マンションを選ぶ際は、どうしても、自分が明るい鉄道沿線などの立地などから選びがちですが、自分が「住まいのハコ」を手に入れた後は、住み心地に関する間取りが、ジワジワと自分の家の価値観に浸透してきます。もちろん自分が好きなマンションブランド、住みたい沿線、日当たりもあって、居住性が高い素晴らしい間取りに住めるに越したことはありませんが、そう上手くはいきません。インテリアや家の中でのライフスタイルを大切にしたい方は、上記の視点で間取りを重視したマンション選びもおススメしたいです。