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今回は、マンションの佇まいとしての外観や住み心地を実現する、マンションの構造について書いてみました。マンションを購入する前に、知っておきたいことです。

マンションの基本的な構造

基本的な事として、ビル、マンションなど一般的な建物のおよそは、垂直方向に伸びる柱と水平方向に架けられる梁(はり)を枠組みとして作られています。

f:id:murakoshi5:20180103000133j:plain(参考画像)
その柱と梁を組み合わせた構造が、マンションの外観や住み心地にどんな影響を与えるか、知っておきたい最低限のポイントをまとめてみました。私は、建築に関する知識は持ち合わせていませんし、この場にて、耐久性など専門的な構造上の問題を指摘するものではありません。

知っておきたいマンションの工法

私たちのマンション購入を左右する部屋の使い勝手、住み心地。それらに影響を与える構造の括りを勝手に3つに分けてみました。

①通常・従来(の工法)

②アウトフレーム(工法)

③逆梁アウトフレーム(工法)

まず上記の工法によってマンションの見た目の外観が大きく変わってきます。①と②の工法のマンションは以下のような外観になります。シンプルな線が細いデザイン。

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 ③の工法によるマンションの外観は以下のようになります。

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逆梁アウトフレームという工法が非常にがっしりした重厚なデザインを作ります。この外観の違いだけイメージして話を進めたいと思います。以下に工法の特徴を。

① 通常・従来(の工法)

住戸を支える柱(フレーム)が住戸内に張り出している工法です。間取り図から見てみます。

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現代のマンションでは、住戸の4隅全部の柱が同住戸内に出っ張っている事はほとんど無いですが、例えば半分の2か所ずつを隣の住戸と分け合って、室内に張り出しているマンションはよく見かけます。

②アウトフレーム(工法)

住戸外に柱を追い出している工法です。

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4隅の柱を(できるかぎり)住戸外に出し、居室内へのでっぱりを無くした構造です。

③ 逆梁アウトフレーム(工法)

柱を住戸外に出す「アウトフレーム工法」と、梁を天井の上に通す「逆梁工法」を組み合わせた工法です。住戸の断面図です。

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通常多いのが、梁の上にコンクリートスラブ(床版)を載せて床を支える工法(順梁)です。床の下に梁が来るため、下の階から見ると、天井から梁が出っ張ることになります。「逆梁」は、梁が床を吊り下げていて、順梁とは逆に、床上に梁が来るため「逆梁」といいます。

基本的に「逆梁」にすると、バルコニー側は柱を住戸外(アウトフレーム)にせざるおえません。

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天井上(上の階の床部分)の梁を、住戸内や、順梁のように部屋とバルコニーの敷居近くに持ってくると人が出っ張りでつまずいてしまうので、梁を下写真のように、バルコニー端に持ってきて手摺にします。梁と柱はセットで組み合わせることになるので、そうなると柱も自動的にベランダに面した住戸外(アウトフレーム)になるからです。f:id:murakoshi5:20180103003753j:plain

前回の記事で書いた「逆梁アウトフレーム」のマンションの間取り図です(関連記事)。

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柱と梁は以下のように組み合わさっています。※わかりやすくするために一部の梁を除いています。

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グレーの部分が柱、赤い部分が梁になります。ベランダ側は「逆梁アウトフレーム」になっています。廊下側は柱が居室外に出てアウトフレームにはなっていますが、逆梁ではありません。上の階の床に梁が出ていると住人の通行の妨げになるからです。ですので逆梁は、主にマンションの外観の顔であり、住まいとしてもリビングが面するベランダ側になります。

どの構造のマンションが良いのか?

それでは、上記3つの工法によるマンション構造のうち、どれが良いのでしょうか。

まず断定できることは、①の通常の工法より、②のアウトフレーム工法と③の逆梁アウトフレーム工法が良いのは間違いないだろうということです(部屋の使い勝手、住み心地の話です)。

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理由は簡単で、上の画像のように室内に柱のでっぱりがあると、部屋にデッドスペースが生じたり、家具の収まりが悪くなるなど、使い勝手が悪い不整形な部屋が出来上がってしまうからです。以前の記事でより詳しく書いています(関連記事)。

ただし、②の「アウトフレーム」と③の「逆梁アウトフレーム」については、好みや、メリットデメリットもあるので、一概には言えません。②と③は、柱は同じく「アウトフレーム」ですが、梁が「順梁」か「逆梁」になります。僕は両方住んだことがあるので、経験上、以下に2つの工法による違い、メリットデメリットを考えながら、ここからは、②の「アウトフレーム」については「順梁」、③の「逆梁アウトフレーム」を「逆梁」と記載し、話を進めていきます。

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以下のような違いが生じます。

マンションの外観

冒頭に話したように、まずどちらかの工法によって、外観が異なるマンションが出来上がります。


「順梁」では、良く作れば下の写真のような洗練されたマンションになりますが、

f:id:murakoshi5:20180103004357j:plain画像出典:シティハウス大森西(予告広告)

悪く作れば、団地のような安っぽい作りになってしまいます。

「逆梁」では、柱と梁がバルコニー側前面に押し出されるため、がっちりとした作りになります。

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住宅としての重厚感、高級感が出ます。

高い視線か、低い視線か

「順梁」は天井から梁が出ているので、高い窓を設置することができません(およそ200cm以下)。

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ですから、開放感や採光に弱い一面があります。


「逆梁」は天井から梁が出ていないため、ハイサッシを設けることができます(210~230cmなど)。

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高いポイントでの開放感、居室内への採光、より多くの日当たりを望める場合もあります。

一方で、「順梁」は、ベランダ下部に梁がないため、ベランダの手すりを透明や半透明にすることができます。

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マンション階下の景色がより広がっていることに加え、窓際で座っていても眺めを楽しむことができます。

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「逆梁」は、既述のように、ベランダ下部の手摺部分が梁のコンクリートになってしまいます。

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ですので、階下の眺望や、窓際で座りながらの景色は一部制限されてしまします。

プライバシーか開放感か

「順梁」は、隣住戸との敷居を壁一枚(しかも避難経路上、すぐぶち抜ける柔い壁が多い)で分けているので、隣から覗かれてしまいます。

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「逆梁」は、隣住戸との境界線をコンクリートの柱で分けるため、プライバシーを確保する事ができます。なにより安心感もありますね。隣を覗いたりすることはできませんでしたし、隣のベランダの気配も感じることは少なかったように思います。

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一方で「順梁」は、隣住戸との隔てが壁一枚、また上述のように、ベランダ下部を明るくすることができるため、ベランダの開放感や景色は多くを望むことができます。
「逆梁」は、住戸のベランダが、コンクリートの柱、梁で覆われるため、ベランダ部分の面積がそのコンクリートの厚さ分狭くなってしまうことや、開放感が一部阻まれてしまうことがあります。

また、ベランダでの洗濯物について言えば、「順梁」は前面や隣住戸から見られてしまうことがあることが前提なので干し方には気を使いますが、「逆梁」はベランダ下部のコンクリートが目隠しの代わりになるため、気を遣わずに干せた気がします。ただし「順梁」は、風通しが良いので洗濯物が乾きやすい、「逆梁」は、コンクリートで風を遮ってしまうため乾きにくい(と妻が言っておりました)らしいです。この辺はあくまで個人の感想です・・・。

以上、好みによる部分、それぞれのメリット、デメリットもあると思いますが、個人的には、マンションにだって、住宅としての重厚感を求めたいですし、窓は、ハイサッシのほうが住戸内からの開放感や、確かに採光や日当たりが良かった感触があるので、「順梁アウトフレーム」より、「逆梁アウトフレーム」のマンションのほうが好きです。

この記事、画像の作成やら内容の整理やら、何より柱と梁をどうわかりやすく表現するか腐心し、記事の作成に1週間以上の時間を費やしてしまいました・・・汗。皆さんも、自分の(買う予定の)マンションがどんな工法によって作られているのか一度確認してみてください。

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