『近居』という言葉(親・子世代が同一生活圏内に分かれて住む事)を最近耳にします。住まい選びの側面から考えて見たいと思います。
この記事の目次
『近居』とは?
近居とは、『親子世代が、気軽に行き来できる同一生活圏内に分かれて住むことを指す(交通手段を選ばず10分~30分ほど)』のだそうです(日経新聞2017年8/24朝刊より)。
結婚や住まいの購入、出産時、親の介護などに直面した折、両親の近くに住むことを考えたり、自身の実家の近く、もしくは配偶者の実家近くに住まいを選ぶ人もいるでしょう。
一方で、現代の働き方や女性の社会進出、少子高齢化などの社会環境を踏まえて、近居のスタイルが重要になってきています。
とくに共働き夫婦には、両親に育児や家事などを助けてもらえるメリットが非常に大きいのですが、「同居」の決断をするには勇気がいるものです。
そこで「近居」です。メリット、気をつけたい点を考えてみたいと思います。
『近居』にはどんなケースがあるか?
夫婦それぞれ両親の実家近くに住まいを購入することはもちろん、高齢になった両親が実家の家を売却して、子供夫婦の住まい近くに引っ越してきたり、同じマンション内の異なる住戸に移り住んできたりするケースもあると思います。
できれば、公共の交通機関が充実している場所、バスや電車換えなしの直線距離で30分くらいまでの場所が、利便性は高いと考えます。
『近居』のメリット
近居のメリットは、子世代、親世代それぞれにあります。私は現在、妻の実家から電車で約20分、ほど近い場所に住んでいます。あまり深くは考えていなかったのですが、妻の実家に近いことで、たくさん良いことがありました。
子世代にとってのメリット
・様々なものをシェアしてもらえる。
私は車を所有していませんので、孫が乗れるような仕様の車を購入してくれました。もちろん近くにいて頻繁に会うからこそ、一緒に使えばよいからと購入してくれたのです。ちょっと遠出するときや荷物を運ぶ時など頻繁に借りています。また、月に2,3度、お米やおかずなど食材をくれるので、家計が厳しい子育て世代にはとても助かっています。いつでも渡せるからと、食材も多めに購入してくれるようです。
・金銭面的な支援、援助
上記のシェアも含まれるのですが、車を借りるとガソリンを給油してくれたり、子供と遊びに行くと朝から晩までごちそうになったり、銀行に寄らなくてもお金を貸してくれたりと、経済的な援助も子育て世代の強い味方です。家庭によって事情は異なりますが、電話だけでお金を無心する事は気が引けますし、近居していて頻繁に顔を合わせているからこその信頼関係があるので、親世代も支援しやすく、こちらも感謝して受け入れやすいわけです。あまり甘えすぎてはいけませんが(笑)。
・いざというときに子供の面倒をみてもらえる。
妻が私用で出かける時は、家まで両親が子供の面倒を見に来てくれたり、電車で近いので、朝こちらから子供を預けに行ったり、子供のことになると喜んで面倒を見てくれるので、本当に助かっています。
親世代にとってのメリット
・子供や孫の顔を頻繁にみられる。
何よりこれが一番みたいですね。どんなに手間だろうがお金がかかろうが、本当に孫と会うのを楽しみにしてくれています。孫のために、家や車の仕様を変えたり、孫との旅行を楽しみに計画したりと、そろそろ晩年を迎える生活の中で新しい家族を迎えた喜びがひとしおのようです。
・病院や遠方へ出かける時に、送り迎えをしてもらえる。
やはり機動力があるのは若い世代ですから、病院や遠方に行きたい時には、日頃のお礼と言ってはですが、もちろん喜んで協力しますし、両親も頼りやすいでしょう。
・現代の社会事情、TT関連などを教えてもらえる。
ネット、スマホ、高齢者にとって面倒な手続きなど、わからないことがたくさんあると思います。妻の両親は、不動産や保険、家電などを吟味するために、私にいろいろ聞いてきます。また振り込め詐欺など社会性を踏まえた事故や事件に気をつける意味でも、普段から相談に乗ってくれる若い人が近くにいることは大きな安心感ではないでしょうか。
他にもきっとたくさんのメリットがあるはずです。
「近居」で育まれる家族愛
近居の最大のメリットは、3世代にわたって近くに住むことで、家族の愛情をたくさん育めることだと思っています。私の父親は車で2時間ほどの離れたところに住んでいるため、1か月に1度程度しか会えませんが、妻の両親とは、1週間に1度くらいは会えます。距離の差は、心の差も縮めてくれるものです。
私は、妻の両親と頻繁に会うことで、実の両親のように言いたいことを言えるようになり、「甘えられる癒しの別荘」ができました。妻がいなくてもご飯を食べに1人でも行けるようになりました。なにより子供がしゅっちゅう「ジジババ」に遊んでもらっていること、それが息子の温かい心を育んでもらう上で、とても大事なことだと思うようになりました。
以前、私の実家の傍にマンションを構えていた時は、親が倒れた際、一時期我が家で預かり、妻が献身的に介護をしてくれたことがありました。その介護の苦難を乗り越えてくれたことが、今でも夫婦の積み上げられた家族の年輪としてかけがえのないものになっています。
近居を始めて当たり前にように感じてしまう、親世代と子世代の行き来ですが、それはお金にも何にも替えられない、かけがえのない「家族愛」の創造そのものです。今では、妻の両親と同じ街に住んでもよいと思うようになりました。
『近居』に関する金銭的支援・優遇措置
家族の生活におけるメリットの他に、それぞれの自治体で近居に関する様々な優遇措置があるようです。
例えば、千葉県市川市の例をとってみると、2つの優遇措置がありました。1つ目は助成金。住宅の購入、新築または建て替えに要した費用の1/2(上限 同居:100万円、直線距離500メートル以内の近居:50万円)を助成してくれます。2つ目は、住宅ローンの優遇措置で、【フラット35】を利用する場合、借り入れ金利から当初5年間、利率が0.25%引き下げになるというものでした(千葉県市川市のHP、http://www.city.ichikawa.lg.jp/chi01/1111000204.html)。住まいを購入する前にぜひ検討してみたいですね。
『近居』で気をつけたい事
『近居』のメリットを享受するために、気をつけたい点。
我々夫婦の関係性、お互いの両親との関係性をしっかり考えて信頼関係を築いていく事に尽きます。お互い近くに住んでいるのに『あれもやってくれない、これもやってくれない、でも顔を合わせないといけない・・・』と、ストレスにならないように。
親・子ともに、お互いを思いやる心や配慮、自立に対する考え方などを話し合い理解を深めながら生活を進めて行くことが理想ですね。
以上になります。
最後に
「介護」「孤独死」「女性の社会進出」など、様々な社会情勢の変化に対応していく上で、『近居』は多くのヒントを含んでいるように思えます。
私は、『近居』のおかげで家族生活に彩りをもらいました。経済的な支援もそうですが、何より家族愛。私にとって実の両親と同じく大好きな存在になったお義父さんとお義母さん。子供にとって祖父母の暖かい愛情。
それは、距離が近いからこそ得られるものです。
マンション購入を検討する際は、エリアや立地など、リセールや資産性について考えることは確かに大事です。合わせて、お金では計り知れない「近居」で得られる価値があることも検討材料の片隅においてほしいですね。