数字は、納得したり、説明したり、相対的に評価したりする上で非常に便利ですが、マンションを選ぶ際には、部屋の「畳数」や「㎡」などの「広さ」を表す数字を見る上で注意したいポイントがあります。
この記事の目次
マンションの広さをどう判断しますか
マンションの広さ表示における問題点は、大きく2点です。1つは、数字で部屋を評価判断し居住性を見誤ってしまうこと、もう1つは、税制優遇措置の可否が住戸の専有面積によって決まることです。
マンションを検討する段階においては、『3LDK、70㎡で5,000万円』とか、『リビングダイニング(以下LD)12畳』といった住戸や部屋の広さを表す数字を嫌でもたくさん見ることになり、自ずとマンションの広さについて、数字で比較検討するようになるはずです。
例えば、『ここは60㎡台か、ちょっと手狭かな』とか、『LDは12畳は欲しいな』といった具合です。
それらの数字は何を意味するのでしょうか。
多くの場合、『80㎡あると広い』とか、『15畳のLDは広い』といった判断材料は、他の物件との比較検討や宣伝効果に起因する、物件を見る人に作り上げられた相対的な価値観です。
マンションの広さを語る上で大事な前提
私たちがマンションの「広さ」を測る上の1つとして吟味することになる間取り図。図面集に断り書きがあるのですが、大事な個所を要約すると以下です。
すべての面積、畳数表示は、壁芯計算で表示し、住戸内の柱型、カウンター、柱型形状のパイプスペース(P)は専有面積および、畳数に含まれます。
壁芯とは?
柱は畳数に含まれる?
正直、こんなの営業マンは説明してくれませんし、僕だってマンションを見続けてきて10年経って、3回もマンションを購入して、最近初めて気が付きました。住戸内の「柱は畳数に含まれる」は言葉通り理解できるにしても、「壁芯」については理解できません。問題点を深堀する前に、「壁芯」について以下簡単に。
壁芯と内法
マンションの広さの測り方には2つあります。それは、「壁芯(かべしん・へきしん)で測る」方法と、「内法(うちのり)」で測る方法です。
上図のように、壁の中心線を囲んで測る方法を「壁芯」、壁の内側を測る方法を「内法」と言います。なぜ2つの測る方法があるのかは、ググっていただければ簡単に調べられますので多くは触れませんが、マンションを販売する際は、建築基準法によって業者が事前に壁芯で登録し、販売後に不動産登記をする際は、不動産登記法によって内法で登記する事が定められているのです。
例えば、私の自宅は以下のようになります。
壁芯で67.14㎡
内法で63.88㎡
マンションを購入する際、公には67㎡の部屋で販売されていましたが、購入してから、登記するべき専有面積は、63㎡と示されたわけです。
この図を見ると、赤い部分「柱」の壁厚の内側が内法面積に含まれていますが、住戸内のパイプスペースはマイナス表記で除かれているのがわかります。
マンション販売時、私たちが目の当たりにする専有面積(㎡)より、登記時の専有面積のほうが数%狭くなりますが、これは上記のとおり法律上の問題を含んでいるので、デベロッパーが販売時に広く見せかけようとしているとか、恣意的な問題ではありません。
それに例えば、購入時に認識していた専有面積表示=壁芯が70㎡で、内法が66㎡だったとして、「なんだよ思ったより狭いじゃん!」とか「70㎡とアピールしていたのに実際は66㎡じゃないか!」といって、何か問題でしょうか。そこはただの数字上の大小にすぎません。むしろ、固定資産税が狭い専有面積から計算されるので、逆に良い事のように思えます。
以上、前置きしたうえで、2つの問題点を見ていきます。
広さを表す数字で居住性を見誤らないために
現代マンション事業において、我々一般庶民が購入することになるファミリータイプの2〜3LDK住戸内の各居室の広さは、LD12畳、キッチン3畳、主寝室6畳、他の洋室5畳(×2)と、±前後はしますが、およその不文律があります。消費者にマンション住戸をお届けする、効率的な現代マンション事業として確立しているからです(関連記事)。
その不文律の根拠はおそらくこんなイメージです。
LD12畳は、4人掛けのダイニングテーブルに、2~3人掛けのソファ、ローテーブル、テレビ台が置けること。主寝室6畳は、夫婦の寝室としてダブルサイズ以上の大きさのベッドや机が置ける事。洋室5畳は、子供部屋として、シングルベッドと子供机が置ける事。
マンションのチラシの間取り図上、そのような家具配置がされている場合が多いからです。
これが最低限、マンションで快適に暮らせる広さだと落ち着いたのだと思います。一般庶民が、2LDKや3LDKのマンション物件を探していると、漠然とそんなものが見えてきて、12、3、6、5(×2)前後の広さの住戸を物色している状況に陥ります。
実際住み始めて、やっぱり寝室は狭かった、もっとLDは広いほうが良かったと、広さに対する価値観は人それぞれだと思います。もちろん経済的費用を惜しまなければより広い住戸を選びたいですよね。ただ一般的には、庶民の一生モノの買い物として上記の数字で選ばざる負えないのが現状だと思います。その上で少しでも高い居住性の住戸を選びたいと考えるわけです。
ポイントとなるのが、1日のうち、多くの時間や場面で使用するLDと主寝室という2つの居住スペースです。
柱型は畳数に含まれている!(主に主寝室)
もう一度、間取り図の断り書きを。
すべての面積、畳数表示は、壁芯計算で表示し、住戸内の柱型、カウンター、柱型形状のパイプスペース(P)は専有面積および、畳数に含まれます。
ここで、顕著に居住性に表れるのが主寝室です。
LDについては、現在、ほとんどの新築マンションにおいて、柱の浸食がリビング内にない事を、およそのデベロッパーが物件の見栄えとして売りにしているのですが、正直、主寝室は、逆に柱が侵食していないケースが稀だからです。LDという大空間と違い、(夫婦が)寝る、作業する、読み書きする、着替えるなど、様々な用途で使用するのが主寝室であるにもかかわらず、限られたスペースなので、便利に日々暮らすために慎重に選ばなければなりません。
間取り図の規約にならい壁芯で計算すると、『柱が畳数に含んでしまう6.0畳の主寝室』と『柱が壁芯の外なので、丸々6.0畳の主寝室』が、マンションを販売する際に使用する間取り図上では、同じ6.0畳で表記されてしまいます。実際の有効畳数は違うのにです。
これは数字上の大小の話ではありません。居住性に大きく影響することを意味します。この両方の部屋に夫婦のダブルベッドを配置してみると、
柱を含む6畳の部屋は、有効畳数が狭くなったばかりか、柱のでっぱりの不整形な部屋によってダブルベッドが上手く収まらず、非効率な居室空間になってしまいます。
以前のマンションは、主寝室が6.2畳でほぼ正方形の部屋でした。ダブルベッドを置いて、僕の勉強机と椅子を置いて、更にベッドの周りで着替えたりアイロンをかけたり、ゆったりとした作業スペースがありました。そのような居住性の感覚があった中で、今のマンションを購入する際、6.6畳という畳数に「お!寝室、今までより広いじゃん!」と思ってしまったわけです。
でも実際は、右上の主寝室6.6畳が柱型まで畳数に入ってしまっていることで、有効スペースは6.0畳以下でした。更に、整形でない部屋ですから、ダブルベッドを上手く配置できず、空間が効率的に利用できないことで、使い勝手の悪い寝室になっています。例えば、要領よくズボンプレッサーをするスペースが、主寝室では取れなくなってしまいました。
以上を踏まえると、生活の趣旨に寄り添う「主寝室は6畳前後」という根拠は、柱など侵食してこない「整形な形の実質有効面積6.0畳」の部屋に限ります(関連記事)。
畳数という数字で居住性を評価しない!(主にLD)
次に、柱がなくても、広さを表す数字だけで部屋の広さを比較評価していると、実質的な居住性を見誤ることについて述べます。これは主に、LDの居住性を検討する上で重要になってきます。
以下、2つの画像は、間取り図上、両方ともLD面積が12.0畳であることを示しています。
図①
図②
ピンクの部分は床暖房を示しています。近年の分譲マンションにおいて、ほぼ床暖房は標準装備です。ここで、そのピンク部分を12畳とは言いません。なんとなく床暖房のスペースがLDで暮らすスペースとして12畳とイメージ付けされやすい図ですよね。これが、私たちが不動産屋より見せてもらう間取り図として一般的です。
次に、下の2つの図を見てください。
図③
図④
オレンジの部分が実際のLD占有面積を示しています。
LDに入ってくる扉の内側と、キッチンから見て天板とそのラインの外側がLDの専有面積(畳数)になります。通常の間取り図表ではここまで親切にLDの専有面積を示してくれません。
図④では、廊下のようなデッドスペースまでLDの畳数に含まれてしまっています。もしLDのドアを図③と同じ位置に設置していたら、LDの畳数は、10.5畳ほどしかありません(尺度はおよそです)。
デベロッパーによって、いや同じデベロッパーでも物件によって、同じ物件でも住戸タイプによって、上記のようにLDの見方が違う住戸が混在しています。
なぜこういう事態が生じるかといえば、マンション事業の住居が、デベロッパー都合によりLD開口部に対して縦長になることがほとんどなので、長い廊下(デッドスペース)が生まれてしまうためです。デベロッパーにとっては非効率な正方形に部屋の形が近づくほど、デッドスペースは少なくなり、図③のような有効空間が多いLDが出来上がるようになります(関連記事)。
デッドスペースがない、図③のような広さの部屋を12畳として数字でイメージしていた場合、住戸選びには注意を要します。そのイメージは、他の物件のモデルルームで感じたかもしれませんし、友人宅に遊びに行った際、LDの畳数を聞いて感じていたかもしれません。
数字だけで12畳を判断しすると、図④のような間取りの住戸に入居して後、「あれ、12畳ってこんなに狭かったっけ?イメージしていた家具が置けない!」になってしまいます。そこで、今度は間取り図まで友人に見せてもらったら、友人宅はデッドスペースがない図③の12畳でした、では後の祭りです。
簡単にまとめると、間取り図の広さについては以下の注意点があります。
住戸における広さを表す畳数は、実際は空間ではない柱を含む畳数である場合があり、それは主に主寝室に気をつける事
廊下のような生活に使用できないデッドスペースを含む畳数である場合があり、それは主にLDに気をつける事
税制上の優遇措置適用は専有面積も条件
最後に税制上の問題から部屋の広さについて注意すべき点です
マンション購入における住宅ローン減税については、誰にとっても大きな問題であるはずです。ここで気をつけなければならないのが、対象住戸が50㎡以上である点で、これは登記後の「内法」換算になります。制度趣旨は常に変更されていますので、詳細は国土交通省のHPで確認してください(住宅ローン減税制度の概要|すまい給付金)。
住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税優遇税制についても、新築マンションの広さが、登記面積50㎡以上240㎡以下という規定があります(国税庁HP:No.4508 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税|贈与税|国税庁)。
以上を踏まえ、販売時の㎡表記で、50㎡前後のマンションを購入する際は、注意が必要になります。さすがにそのあたりを焦点にせず販売する不動産屋がいるとは思えませんが、販売時に見る専有面積(壁芯)と、税制の適用対象面積になる登記面積(内法)の違いを事前によく確認しておきましょう。
最後に
以上、部屋の広さを表す「数字」について気をつける視点をまとめてみました。
有効面積(壁芯と内法)については、税制上の問題が絡んでくるので事前確認をしましょう。また各居室の広さについては、畳数だけで実質的な部屋の広さや居住性を判断してはいけません。毎日生活する空間ですから、部屋の広さを表す数字が意味することに着目して、物件選びに臨みたいものです。