マンションの購入を検討する際、どれも似たような間取りしか選択肢が無い状況が多いはずです。その中で、少しでも住環境の良い住戸を選ぶ視点をまとめてみました。
この記事の目次
金太郎飴のようなマンションの間取り
70㎡前後、3LDKの一般的なファミリータイプのマンションの間取りの多くは、『住戸スパン(幅)が約6メートルで周囲を壁に囲まれた、2つのタイプの間取りの中住戸』に集約されてしまいます。よく言う「田の字型リビング(①縦長リビング型、②横長リビング型」という間取りです(何故、田の字型と呼ぶのか:以下関連記事)。
近代の効率的マンション事業のため、どこのデベロッパーでも同じような設計になっており、金太郎飴のように同じような間取りが並びます。要は、自分の好きなエリアから、駅から、ブランドの中から、自分好みの住みやすいベストな間取りを探す、選ぶということは困難なのです(詳細は関連記事)。
事業主都合で金太郎飴に並べているということは、イコール、一世帯当たりの住み心地を、以下のように犠牲にしているわけです。2つのタイプの間取りの中でも、より多い「田の字型縦長リビング」の間取り。
① 住戸壁面積に対し窓が少なく小さめ
② 両側が壁に囲まれて開放感がない
③ 長方形の居室が増え、使い勝手が制限される
④ 廊下のようなデッドスペースが増えてしまう
⑤ クローゼットの室内への浸食が部屋の使い勝手を悪くする
⑥ 柱の室内への浸食が部屋の使い勝手を悪くする
⑦ 玄関から住戸奥まで見渡せるので住戸の奥行き感がない
⑧ 共用廊下側の部屋の採光が乏しく(暗く)なりがち
⑨共用廊下側の部屋のプライバシー性が弱い
など。
ただし、どこを選んでも住み心地が全く同じわけではありません。少しでも良い住環境確保のための見るべきポイントがあります。
金太郎飴の中から条件が良い部屋を選ぶための4つの視点
共用廊下に面して同じような間取りが並ぶマンション住戸(特に中住戸)。
そんな似た間取りの中でも、明るさ、開放感、騒音面など、住環境が少しでも良い部屋を選ぶために、①住戸のバルコニー側、②住戸の共用廊下側、③住戸の水回り周辺、④住戸の位置が、見るべき4つの視点になります。
住戸バルコニー側
家はやっぱり明るさです!住戸の顔ともいえるバルコニー側は、住戸内の明るさや開放感を決めてしまう、田の字型間取りの中住戸、最大の生命線です。リビングダイニング(以下LD)は、1日の中で多くの時間を過ごす最重要な空間だからです。
① バルコニー前面の環境
半永久的に、住戸の明るさ、日当たり、開放感、好みによっては眺望などが保証されるように、採光や日当たりが前面の建物で遮られていないか、将来的に高い建物が住戸前に建ってしまうリスクの有無など、住戸前の周辺環境をよく吟味しなければなりません。同じマンション棟でも住戸位置によっては環境が異なる場合がありますので注意が必要です。そのための周辺環境を見るべき詳細については以前の記事で触れています
(関連記事)。
② LD開口部の広さ
良好な採光、日当たりを確保するために、LD窓の大きさもよく確認しておく必要があります。同じマンション内、同タイプの間取りの住戸でも、4隅の柱の位置の影響などから窓枠の幅が実は違ったりします。間取り図上細かくチェックしたり、完成物件を見られるようなら良く見極めます。
最近は、隣の洋室とほぼ一体化されたワイドサッシを採用している住戸もよく見かけます。バルコニー面の窓は幅もLDと隣接した洋室の間をコンクリートで仕切らず、
開口部一面が「連窓」仕様だと開放感が違います。
また、窓枠の幅だけでなく、サッシの高さも大事です。通常の窓枠の高さは2m前後ですが、2.2mnなどのハイサッシの採用は、日当たりや採光を向上させます。
ただ、ハイサッシを採用しているマンションは珍しいので意識的に選ぶのは困難でしょう(ハイサッシを採用しやすい逆梁アウトポール工法のマンション)。
③ LD隣の洋室との間仕切り
LDと隣の部屋を可動式間仕切りによって一体化することは、狭い6mスパンの住戸の開放感を高めるために欠かせません。
特に、間仕切りの奥行きは窓枠ぎりぎりまで、高さは天井までだと、空間の一体感、開放感がより高まります。これも物件によってウォールドアや引き戸など仕様が異なり、使いにくそうな間仕切りも物件によって見受けられます。
④ LD空間の使い勝手
バルコニー側のLD空間において、柱型の浸食がないのは最低限です。
柱型が侵食している空間ではデッドスペースが生まれ、テレビ台やソファなど家具の配置、空間の非効率な活用など住み心地に影響が出ます。
近年の新築マンションでは、LD側の柱が侵食している物件は稀であり、ほとんどがアウトポール設計になっているはずです。
⑤LD空間をまたぐ梁
主に天井を横にまたぐ梁。LD12畳といった広さを表す数字だけでなく、LD内の梁にも着目しましょう。頭上なので実際の使用空間には関係ない事から見落としがちですが、梁の室内への浸食度合いによって、開放感が違ってきます。同じマンション内、同じタイプの部屋でも住戸位置の関係で(102号室と103号室など)、梁の浸食具合が変わってくる場合もあります。
⑥バルコニー
まず、バルコニーの奥行きについてですが、現代の一般的なマンションは、およそ1.8mと2mに大半分かれます。20センチ違うだけで、バルコニーの開放感や使い勝手が変わってきます。まれに3m、4mという、いかにも華やかなバルコニーライフを売りにしているマンションも見かけますが、バルコニーの奥行きが伸びる、つまり屋根の部分も伸びる事で、住戸内奥までの採光が弱まるデメリットもありますので、どちらが自分にとって優先順位をつけるのか、事前に確認しましょう。
また、バルコニーの手摺ですが、すりガラスや透明ガラスなど、住戸内で座りながらでも手摺の向こう側まで眺望が望めたり、明るさが増す仕様を選びたいです。
低層階だと外部からの目隠しのため、コンクリートの場合が多いので、その場合、風通しや採光が若干弱くなる傾向にあります。『コンクリートの手摺だと洗濯物が乾きにくい』と、妻が申しておりました。
以上、田の字型間取りにおいて、バルコニー側の見るべきポイントでした。
住戸共用廊下側
2番目に見るべきポイント、共用廊下側です。基本的に玄関を挟んで夫婦の主寝室(洋室1)と子供部屋(洋室2)が並ぶ設計になります。
① 共用廊下側の環境
共用廊下側の部屋は、バルコニーの反対、住戸の北側が多く、住環境は犠牲にされている場合が多いため、明るさ、開放感は無いに等しいです。物件によっては真っ暗な部屋も少なくありません。ですから、なおさら最低限の住環境を確保したいです。
共用廊下を隔てた建築物の存在の有無をチェックします。同じマンションの違う棟の共用廊下側と対面していたり、立体駐車場や、共用エレベータ、共用階段の存在であったりと、共用廊下側の部屋の明るさを邪魔する要因が多くなります。できれば廊下側も建築物とうの存在が無く空が抜ける環境の住戸を取りたいところです。高層階が良いことはもちろんですが、例えば、以下のような住戸の並びだと、住戸Aと住戸Bの共用廊下側には採光を邪魔する存在がなく、居室内は比較的明るさを保てます。
②共用廊下側の間口の広さ
こちらも、窓枠の幅の広さが住戸によって違いますので、同マンション内で似たタイプの部屋を見るときは見比べましょう。また通常は腰窓が多いですが、稀に床までの窓の仕様があります。
窓の面積が広くなる分、採光は良くなります。
③玄関前のスペース
玄関前が直で共用廊下だと、特に廊下側の主寝室、洋室から住人の足跡や気配などがより身近になります。また、玄関開けた時に通りかかった住人とガッチャンコともなりかねません。そこで、アルコープ(共用廊下と玄関の間のプライバシー空間)やポーチ面積を確保している住戸であることが玄関側の良好な住環境の条件になります。アルコープの存在は、基本物件ごとのコンセプトによりますが、同じマンション内でも空間の有無、大小に違いがある場合があります。
④ 廊下側の喧騒・プライバシー
住人の気配や足跡などから少しでも遠ざかるために、多くの人が使用する共用エレベータや共用階段などから離れた、廊下の隅に近い住戸を選べば、共用廊下の交通量が減り、住戸前は落ち着いた環境になります。
⑤ 共用廊下側の部屋の使い勝手
バルコニー側と違い、共用廊下側で柱が居室内に全く侵食していない住戸はほぼありませんが、これも、同じマンション内において、柱の位置などの関係上、住戸によって具合は異なります。柱やクローゼットの室内への浸食をできるだけ押さえた住戸を選びましょう。
以下は極端な例ですが、柱型やクローゼットが侵食している部屋は、不整形な形状の形になり、家具の配置が柔軟にできなくなります。特に主寝室は良くチェックしておきたいポイントです。6畳という限られたスペースに置いて、大きく柱が侵食している部屋は、ダブルベッドなど大型家具を上手に置けず空間が分断されがちです。
夫婦のダブルベッドを置くだけの部屋になってしまい、他、主寝室に置きたい家具を置くスペースが無くなったり、日々行う作業が制限されてしまいます。
⑥寝室に侵食する梁
LD空間と同じように見るべき梁。特に、6畳、5畳という限られた空間で梁が大きく侵食していると、頭上空間の広がりが大きく制限され、ベッドを置く位置などで悩まされます。
以上、共用廊下側の主寝室や子供部屋の明るさ、外部からのプライバシー性、使い勝手の良さといった、少しでも良い住環境の部屋を選ぶためのポイントでした。
住戸中央水回り付近
3つ目は住戸の中央付近、主に水回り周辺です。
① LDK一体空間か、LDとK分離か
キッチンの天板上部に吊戸棚があって、半クローズにしているキッチン。
限られたスペースの中で、吊り戸棚はあれば便利ですが、LDと分断されたキッチンスペースになりがちです。吊り戸棚を無くし、LDとの一体感が増せば、より開放感が出るLDKの大型空間になりますが、敷居がない分、料理の際の油がLDまで届きやすくなりクロスが汚れやすくなるなど弊害もあります。
個人的にはフルでオープンにした方が開放的で好きです。
②洗面室とトイレの床はタイル張りか
近年、資材費の高騰により、住戸内設備、仕様の削減が目立っています。洗面室とトイレのタイル張りは空間の質感が出ますし、何より清潔ですが、最近はビニールシート張りが主になっています。洗面室だけでもタイル張りの住戸を選びたいところ。仕様については、物件概要、仕上概要表で確認できます。
③ 洗面室がリビング内かリビング外か
洗面室がリビング内に面していているか、リビング外の廊下側に設置されるか、これも好みが分かれるところだと思います。例えば、リビング内に面していると、台所や洗濯機、バルコニーとの動線が便利になり、子供のお風呂や着替えの様子などを安心して見ながら料理できるなどのメリットがありますが、客人がお風呂を利用する際などは、ちょっと気を遣いそうです。洗面、洗濯、風呂などはLDの生活スペースと分離して廊下側に出したいという人も多いでしょう。ライフスタイルによって好みが分かれますね。
以上、同じ田の字型でも、水回り周辺で仕様や設備の配置など、住み心地に差が出る場面は、女性目線で考えれば他にもあるかもしれません。
住戸の位置
最後、4つ目。住戸の位置です。つまり、少しでも住環境をよくするために、マンション棟内で、どこに位置する住戸を選ぶべきか。
① 縦のラインで選ぶ
縦のライン。高さですね。当然、眺望や日当たりが良い高層階が良いと思いますが、高層階は予算が張ります。何階からであれば、十分な日当たり、眺望が手に入るか、前面の建物の高さなどをよく確認しておきます。前面が「第一種低層住専用地域」という戸建てが集まった用途地域であれば、3階くらいでも十分でしょうし、駅近で周辺高層ビルが多ければ、10階以上でなければ明るさや眺望が望めないかもしれません。そこはよく見極めましょう。一方で、1階が好きな人もいるはずです。階下がない1階は伸び伸びした子育てに向いていますし、庭付き住戸であれば、庭の緑を見ながらゆったり暮らすこともできます。もちろん低層階は、日当たり、眺望が犠牲になります。
② 横のラインで選ぶ
先ほど、共用廊下の所でも述べましたが、同じ間取りでも、A住戸~F住戸まで、どこでも良いというわけではありません。
例えば、A住戸の角が、大通りや線路に面しているとすると、B、C、D・・・住戸というようにA住戸から離れれば騒音も軽減されます。F住戸のわきにゴミ置き場があるとすると、E、D、C・・・住戸というようにF住戸から離れれば、ごみ置き場の匂いや音を気にせずに済むかもしれません。C、D住戸の前に細長い10階建てのビルが建っていたらどうでしょうか。住戸内の日当たりや眺望を確保するために、A、B、E、F住戸を選びたいですよね。
物件によっていろいろな条件があると思いますので、どの高さの住戸、どの位置の住戸の環境が、生活にどんな影響を与えるか、注意深く色々考えてみる必要があります。
最後に
以上、同じような似たり寄ったり「田の字型プラン」の間取りでも、住戸周りの環境や住戸内の様々な仕様によって、住み心地にこれだけの違いが生じます。
まず1つ目。バルコニー側を確認。
やはり家は明るさが1番だと思います。まずは何といっても住戸内の多くを占め、一日の中で多くの時間を費やすLD側の明るさを確保することです。万が一バルコニー側の空間が暗い環境を選んでしまうと、日々、1日中照明が必要になり、大きな後悔に陥ります。
2つ目。共用廊下側を念入りにチェックします。
バルコニー側と違って住環境は犠牲にされがちですが、だからこそ最低限の住み心地を確保する必要があります。主寝室や子供部屋の明るさ、使い勝手、プライバシーの確保など、住み始めてから色々気づく前に事前によく確認しましょう。
3つ目。住戸の中央、水回り周辺。
洗面室やトイレの設備仕様の違い、それぞれの場所によって生活動線が異なるなど、使い勝手が物件や住戸のタイプによって異なります。
4つ目。住戸の位置を吟味します。
階数もそうですが、同じ間取りだからといって、A住戸でもE住戸でもどこでも良い!と安易に決めてよいものではありません。6メートルという一つの住戸分ズレただけで住環境が異なる場合があるので注意が必要です。
以上、4つの視点を見てきました。良い事悪い事に、好みの問題もあります。
完成物件はよく吟味できますが、未完成物件は、間取り図、住戸配置図をよくよく何度も見比べて見ましょう。またモデルルーム内のマンション棟模型や、現地に何度も足を運んでリアルに住環境を様々な角度から物色してみましょう。
異なる物件の比較、もしくは同じ物件内の住戸の比較において、どこを切っても同じ、田の字型タイプの間取りしか選択肢がない場合、少しでも良い住環境の部屋を見つける努力を惜しまずに、良い物件選びの判断材料の1つに加えることが大事です。